2011年5月27日金曜日

マゼラン最初の世界一周航海記(伊高浩昭読書日記より)

   先ごろ岩波書店から『マゼラン最初の世界一周航海』(長南実訳)という文庫本が出て、一気に読んだ。私はことし1~4月、横浜を出航し東回りで横浜に帰航する86日間の世界一周航海を経験し、太平洋と大西洋でマゼランの航路を横切ったことや、かつてマゼラン海峡を2度航行したことから、この本の内容に強い関心があったのだ。

   ポルトガル人フェルナン・デ・マガリャンイス(1480?~1521、英語名ファーディナンド・マジェラン=日本語でマゼラン)は5隻の船団を率いて1519年8月10日セビージャ港を出港し、翌年10月21日、南米南端地方で、とある波荒い入江に到達した。その奥の水路を用心深く進むと、11月28日太平洋に出た。マゼランは「パタゴニア海峡」と名付けたが、後に「マゼラン海峡」と命名された。

   船団はフィリピンに行くが、マゼランは1521年4月26日、セブ島の東にあるマクタン島で先住民族の領主に戦いを挑み、戦死する。部下のセバスティアン・デルカノら18人がビクトリア号で1522年9月8日セビージャに帰還し、世界初の地球一周航海が3年で完成した。

   この本は、その18人の一人でイタリア人のアントニオ・ピガフェッタの手記と、スペイン国王秘書マクシミリアーノ・トランシルヴァーノがデルカノら3人の乗組員から聞き書きした文章で構成されている。一行が出会った各地の先住民族の風俗やキリスト教への反応の描写が面白い。欧州で当時流行していた怪物伝説に悪乗りしてか、ピガフェッタが「ある木の落ち葉は生きていて、歩きだす」、「この島の住民の耳は体と同じ大きさで、片方の耳を寝床にし、もう片方の耳を体にかぶせる」などと書いているのには失笑を禁じえない。

   スペイン・ポルトガル両王国の海洋権益をめぐる敵対関係や、それと関連して起きたポルトガル人マゼランに対するスペイン人乗組員らの反発と裏切りについての記述も興味深い。両王国はローマ法王の仲介で1494年、世界を二分するトルデシージャス条約を結び、東航(アフリカ周りアジア航路)がポルトガルの領分となったため、スペインは西航(南米周りアジア航路)に乗り出さねばならなかった。香料諸島と呼ばれたモルッカ諸島(現インドネシア領マルク諸島)にたどりつき、欧州で高価な丁子、肉桂、ニクズクなどの香辛料を本国に大量に運び込むのが最大の目的だった。

   マゼランの狙いもそこにあり、香辛料を船に積んだらパタゴニア海峡経由で帰航してもよかったのだ。だが諸島に到達する前に命を落とし、部下たちがポルトガル艦隊に襲撃される危険を冒して喜望峰を回り、結果として世界一周航海を成し遂げたのだった。スペインは1492年にインディアス(新世界アメリカ)に到達していたが、当初は米大陸よりも香料諸島への関心の方が強かったという。

   ラ米学徒には必読の本である。ぜひ読まれんことを。伊高浩昭(2011年5月27日)

2011年5月20日金曜日

平和・コミュニティ研究機構の連続講演会のお知らせ

立教大学平和・コミュニティ研究機構より、連続講演会「原発社会に未来はあるか?」の案内をいただきましたので、お知らせいたします。

★第1回講演会 「原発という選択のあやうさ-福島第一原発事故とその背景-」
日時: 5月26日(木)18:00~20:00
会場: 太刀川記念館3階
講演: 菅井 益郎氏(國學院大學 経済学部 教授)
概要: 今回の原発事故によって、ようやく原発問題を自分たちのこれからの社会の問題として正面から議論できるようになりました。
今回は技術面もふくめて原発問題の全体像、これまでの歴史を、長年にわたって原発、東京電力、政府を批判し、取り組んでこられた菅井教授にお話しいただきます。

【会場へのアクセス】 http://www.rikkyo.ac.jp/access/ikebukuro/direction/
【立教大学キャンパスマップ】 http://www.rikkyo.ac.jp/access/ikebukuro/campusmap/
【参加費】無料
【お申込み・お問合せ】不要
【主催】 立教大学平和・コミュニティ研究機構
----------------------------------------------------------------------------------------

第2回目以降、次のような講演会です。
変更の可能性もありますので、事前に立教大学平和・コミュニティ研究機構ホームページにてご確認下さいますようお願い致します。

http://www.rikkyo.ac.jp/research/laboratory/IPCS/

★第2回 「原子力発電と地方自治」
講演: 佐藤栄佐久氏(前福島県知事) http://eisaku-sato.jp/blg/
日時: 6月11日(土)14:00~16:00
会場: 8号館 8101
概要: 原子力発電を受け入れることは地方自治体にとっては重大な決断である。福島県前知事として原発の受け入れ、安全の確保にどのように苦闘したのか、また東京電力や安全・保安庁、検察庁はどのように対応したのか。『知事抹殺』(平凡社)の著者がその経緯と被災・事故後に福島県各地を歩いた思いを語る。

★第3回 「原発なしでも大丈夫ですか?-エネルギー基本計画の失敗と転換の必要性-」
講演: Andrew DeWit氏(本学経済学部 教授)
日時: 6月16日(木)17:00~19:00(18:15~20:15に変更の可能性あり)
会場: 8号館 8101
概要: 震災後の日本において、従来のエネルギー基本計画が変更を迫られ、エネルギー転換が不可避の現実となっている。エネルギー政策における制度選択およびその政策決定過程について、歴史的制度選択の観点から分析する。

言語: 日本語

★第4回 パネルディスカッション「世界は『フクシマ』をどう受け止めたか」調整中

メキシコ歴史文化講演会のお知らせ。

■メキシコ歴史文化講演会「悲劇のメキシコ皇帝マクシミリアン一世」

「メキシコ-日本アミ-ゴ会」が、「メキシコ独立200周年・革命100周年」を記念して開催する講演会です。8月と9月にも開催される予定です。

講師:菊池 良生(キクチ ヨシオ)明治大学理工学部教授
日時: 5月27日(金)18:00~20:00
場所:在日メキシコ大使館別館5階 エスパシオ・メヒカ-ノ
講演要旨:メキシコ皇帝マクシミリアン一世といっても、メキシコ政府官許などの歴史書を紐解いても皇帝マクシミリアンの名は見当たらない。代わりにたった一行、「ヨーロッパ列強の手先となって、メキシコ干渉戦争に暗躍したオーストリア大公フェルディナンド・マクシミリアンはその廉で、1867年6月19日、ケレタロ郊外で銃殺された」とある。しかしそれにしても、なぜヨーロッパ屈指の王家ハプスブルク家の、しかもオーストリア皇帝の弟という折り紙つきのプリンスが本国を遠く離れたメキシコで銃殺されたのか? 旧世界と新世界の対決の犠牲となったのか? その謎を追ってみたい。

※先着順80名様まで。参加費:無料

【お問合わせとご予約先】  
メキシコ・日本アミーゴ会事務局
info@mex-jpn-amigo.org

2011年5月18日水曜日

講演会「植民地時代メキシコの先住民文書を読む」

『植民地時代メキシコの先住民文書を読む』
講演者:ミシェル・オーダイク博士(メキシコ国立自治大学文献学研究所先住民言語セミナー主任研究員)

上智大学イベロアメリカ研究所主催の講演会をお知らせします。

オアハカ地方の植民地時代先住民文書研究で国際的に著名な、メキシコ国立自治大学文献学研究所先住民言語セミナー主任研究員のミシェル・オーダイク博士の講演会です。

先住民文書研究の具体的研究プロセスを紹介してくださるそうです。

日時: 2011年6月2日(木)17:30〜19:30
場所: 上智大学中央図書館総合研究棟8階L-821会議室
言語: スペイン語(通訳なし)

参加費無料・予約不要

詳細はこちらまで、
http://www.info.sophia.ac.jp/ibero/

2011年5月11日水曜日

講座を受講するにあたって

2011年のラテンアメリカ講座が始まった。先週はその第1回目。第1週はお試し授業なので、新規講座があると、見学に行く人が多い。こうした時期に、時々質問を受けるのが、
「わたしにはこのクラスを受講する資格があるのだろうか?」というものである。

聞かれた場合には、こう答えている。
「ラテンアメリカ講座ではレベル分けテストをしていません。例えば、同じ授業を何回も受けて完全に理解したい人は翌年もまた同じ授業を取る。ちょっと難しいなと思う授業も、自分は語学の勉強は得意だし今年はたくさん時間が取れそうだから挑戦してみる。今年は仕事が忙しいので予習ができないから、レベルを少し下げて下のクラスを受ける。復習のために初級を受けてみる・・・など、各自の現在の状況に応じて受講できるようにするためです。」

語学の場合は上記の答えでほぼ当てはまるような気がする。

講義課目の場合はどうだろう。これはまったく私見にすぎないので、ここに書くのはどうかなと思ったのだが、聞かれれば答えるので、今年は書いてみる。

これについては講義内容の難しさよりも、内容に興味が持てるかどうかが一番大事であると思う。
たとえば、ラテンアメリカ論1のようにたくさんのレポートを要求される場合であっても、毎回の授業を楽しめるようであれば、書くことは容易なのではないだろうか。自分を触発してくれる授業のテーマなら、自分もきっと語りたくなるだろうし書きたくなるだろうと思う。

ラテンアメリカ論2のように、ニュース解説的な授業の場合はどうだろうか。
その話を聞きたいかどうかが一番大切なような気がする。
どんなに難しい話だったとしても(たとえば、今なら放射性物質に関する話など)、興味がある話ならば、誰でも熱心に聴いているのではないだろうか。

文学の場合はどうだろうか。
かりにラテンアメリカ文学を一度も読んだことがなくても、年間何百冊も様々なジャンルの文学を読み漁っている人は? クラスに出席して話を聞いてワクワクする人はどうだろうか。一度もラテンアメリカ文学を読んだことがなくて、受講する自信がない場合は、今週から読むことになっている、新潮社から出ているガルシア・マルケス「予告された殺人の記録、十二の遍歴の物語」を読んでほしい。2~3日で読み通して、その世界にハマるようなら、きっと楽しい受講ができると思う。

2011年5月9日月曜日

日本のためのチャリティ・ブッフェ・ディナー

日本在住のラテンアメリカ出身者有志が、東日本大震災の被災者に募金を送るため、チャリティ・イベントをご紹介します。

日時 5月21日(土) 18時半から21時
場所 メキシコ大使館内 エスパシオ・メヒカーノ
参加費(寄付) 1万円
定員 100名

当日は各国の料理に加え、南米アーティストのエンターテイメントが楽しめるそうです。
集められた寄付金は当日、日本赤十字社に寄付されるそうです。

申込・お問い合わせ: todosconjapon2011@hotmail.com

紹介ビデオはこちらです。
http://www.youtube.com/watch?v=BIqta5HTnQA&feature=share

この紹介ビデオのサイトから、興味深いLatinoComunityの動画へもアクセスできます。

2011年5月2日月曜日

シネマ・ノーヴォ  グラウベル・ローシャ・ベスト・セレクション

ブラジルの映画監督、グラウベル・ローシャのベストセレクション上映予定のお知らせです。
詳細は以下のホームページをご覧ください。

http://sky-way.jp/rocha/